PEACE
* * *
「どういうつもりだ? 瀬梛よ」
ある部屋で男が言った。
男はタバコを吸い、体型は太っている。
カツラだとまるわかりの頭とは不似合いに、豪華なスーツに見を包んでいる。
「どうもこうも、町長。このイヤリングを渡しに来た」
「一体どういう心境の変化だ?」
豪華な椅子に腰をおろしている町長は、瀬梛にきつい視線を送った。
瀬梛は気づかれないように部屋を見回した。
この部屋には瀬梛と町長の二人だけ。
だが、先ほど部屋に入る時、男達がそこらにわんさかいた。
瀬梛を警戒しているようなそんな目で、見ていたのだ。
(一応、こいつらを引きつけるのは成功した。後は……)
瀬梛は口角を上げる。
「このイヤリングのことは、どうせ知っているんだろう。これと、瀬裡を交換しろ」
「なんだと?」
突然のことに、町長は眉を寄せる。
「これは瀬裡の力が半分秘められている。そしてもう一つ。堕落の印に共鳴して、力を増
幅させる石。暗黒ノ奴らは、どうせこれが本当の目的なのだろう?」
瀬梛は、奈久留達に一つ隠していたのだ。
この石の力。
奴らの目的が、この石であることを。
瀬裡は、ニヤリと笑った。
額には、汗が滲んでいる。
「馬鹿なやつめっ」
「!?」
町長がそう言った瞬間、部屋の外で構えていた男達が、瀬梛の体を押さえた。
「瀬梛よ。お前がそう来ることぐらい、わかっていたさ」
床に体を押さえ付けられた瀬梛を、町長は椅子から立ち上がり見下ろした。
「お前が交渉にくることも、瀬裡を取り戻しにくることにもな!」
大きく高笑いをする町長に、瀬梛は唇を噛んだのだった。
(くそっ! 先を読まれていた! これじゃあ、アイツらが……!)