PEACE
「瀬裡!」
「馬鹿! 敵に背中を向けるな!」
交戦中だった雪夜は、瀬梛に向かって叫んだ。
だが、その声に気付き振り向い時には、既に剣の先が瀬梛に近付いていた。
(やられる……!)
そう思った時、瀬梛の目の前に奈久留が飛び込んできたのだ。
パリンと、何かが割れる音がした。
「奈久留……っ!」
雪夜の声が耳に入った。
それと同時に、奈久留が膝をつく。
(私、生きてる……?)
奈久留は、激しく呼吸を繰り返した。
覚悟していた痛みがやって来ない。
ただ、床に散らばったペンダントのカケラが奈久留の目に入った。
「ペンダントが、守ってくれたの……?」
砕け散った破片を、奈久留は見つめた。
そしてその中に、欠けた様子の見られない綺麗なな石があった。
「この石は……?」
石に手を伸ばした時。
「奈久留!」
瀬梛が、奈久留に被さった。
何が起こったのか、一瞬理解出来なかった。
ただ、瀬梛が奈久留を抱きしめている腕の隙間から、男が剣を振り上げているのが見えた。