PEACE

――また、人が死ぬの?

――また、血を流すの?

――また、私は何も出来ないの?

瀬梛さんが危なかったから、飛び込んだ。

“助けられる”

自分の力量もまだわかんないのに、そう確信して自惚れていた。

ほら、やっぱり私は無力だ。

助けるどころか、瀬梛さんを結局巻き込んでしまった。

なんて、私は弱いんだろう……。


――『奈久留は、弱くなんてない。無力なんかじゃない』

――信じて、いいの?


――『奈久留が頑張ってきたこと、わかっている』

――本当に?


――『お前は、強い』


(…………私は、負けたくない――!)


その時、手に握りしめていたあの石が光りを放った。

そして、再び覚悟した痛みは、来ることはなかった。
< 58 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop