PEACE
――また、人が死ぬの?
――また、血を流すの?
――また、私は何も出来ないの?
瀬梛さんが危なかったから、飛び込んだ。
“助けられる”
自分の力量もまだわかんないのに、そう確信して自惚れていた。
ほら、やっぱり私は無力だ。
助けるどころか、瀬梛さんを結局巻き込んでしまった。
なんて、私は弱いんだろう……。
――『奈久留は、弱くなんてない。無力なんかじゃない』
――信じて、いいの?
――『奈久留が頑張ってきたこと、わかっている』
――本当に?
――『お前は、強い』
(…………私は、負けたくない――!)
その時、手に握りしめていたあの石が光りを放った。
そして、再び覚悟した痛みは、来ることはなかった。