PEACE

「秘菜石は、王家に伝わる石なんです。秘菜石は、伝説と言われる雷王獣の力を呼び覚ますものなのです」

「え? じゃあ……」

全員が奈久留の肩の上にいるファルコを見る。

「キュ?」

「そういうことです」

瀬裡の一言で、場が騒ぎ出す。

(ファルコが、雷王獣ってこと――!?)

驚きで目を大きく見開いた。

ファルコ本人は、自分が何故こんなに見られているのかわからないという顔をし
ていた。

(でもこれで、おじいちゃんが言っていた秘菜石を見つけることが出来たんだ!)

一歩前進出来た気がした。

「雪夜さん、羅針盤、持っていますよね?」

「ああ」

突然瀬裡に言われ、雪夜は少し慌てて羅針盤を取り出す。

「羅針盤の中心に、穴がありますよね。そこに秘菜石を嵌め込むことが出来るんです」

そういえば、羅針盤の中心に穴が空いているのが不思議だった。

羅針盤の穴は秘菜石を嵌めるためのものだったのだろうか。

恐る恐る秘菜石を羅針盤の穴に近付ける。

「奈久留さん」

瀬裡が奈久留に話しかける。

奈久留は一旦、手を止めた。

「この先、真実を知り、闇に飲み込まれそうになることがあると思います。けれど、進むことを止めてはいけません。貴女が信じるままに、歩んでくださいね」

「は、はい……?」

どこか変だ、と奈久留は感じた。

これではまるで、二度と会えないかのように。

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