PEACE
「早く嵌めな」
瀬梛に急かされ、奈久留は言葉をぐっと飲み込んだ。
そっと、秘菜石を嵌め込んだ。
奈久留達の周りに、風が渦巻きはじめた。
(これって……)
心当たりがあった。
以前もこんなことがあったような気がする。
(そうだ! おじいちゃんの転移魔術!)
「お元気で」
少し悲しそうな表情で、瀬裡は言った。
「え!? ちょっと!?」
焦る奈久留だが、風が邪魔して動けない。
「こうなることを、知っていたのか?」
にこりと笑顔を見せる瀬裡。
それが全てのようだ。
「ちょっと時間がないんだ。お前達はさっさと先に進みな!」
「でもっ……」
なんとか止めようとしても、転移魔術を中断させるすべなどわからない。
「瀬裡も戻ってきた。後は二人でなんとか出来るさ!」
ニコッと笑う瀬裡と瀬梛に、奈久留はもう何も言えなくなる。
「今回は本当にありがとな! 元気で」
「ああ」
「二人とも元気でね……っ!」
風に体が包まれ、瀬梛と瀬裡の顔が見えなくなる。
不安な気持ちを持ったまま、何処へ行くのか定かではない中で奈久留と雪夜とファルコは風に飲み込まれていった。