PEACE
「出てきたらどうです?」
「おや、気づかれておりましたか」
奈久留達が去った部屋で、瀬梛と瀬裡の背後から誰かが現れる。
男の声だ。
「気づいていたから、奈久留さん達を先に行かせたのです。貴方はあの方の素性をどうせ知っておいでなのでしょう? 貴方が何をするかわかりませんから」
瀬裡と瀬梛はゆっくりと振り返る。
「そういうことでしたか。まあ、好都合でした。私はまだ、あの方に正体を知られるわけにはいかなかったので」
「どういうことです……?」
瀬裡の問いに、男は笑みで誤魔化した。
「先ほどのは、予言ですか? 本当に素晴らしい力ですね。今後の戦いの行方も見えるおられているのでしょうね」
「それがなんですか? もし、私が見えていたとしても、未来は決まっています。貴方達に私は必要ないのではないですか?」
「未来は決まっている……ですか。戯言ですね。未来なんて変えられるものです。そのために、貴女の力を利用する。それだけですよ」
男の強い眼差しに、瀬裡は押されそうになる。
「それにしても、姉の方にも力があるとは知りませんでしたよ」
「家族以外には見せたことがないからな」
「それでは私が知らないのも納得できますね。本当、貴女方の力は禁忌に近い。予言の力に再築。実におもしろいですね」
優雅に笑う男だが、その笑みはどこか恐怖を感じさせる。
瀬裡と瀬梛の背筋が、ヒヤリと凍る。
「さて、立ち話ももう終わりです」
男が片手を上げると、どこに隠れていたのか、黒いフードに身を包んだ男たちが一斉に二人を囲んだ。
「ついてきてもらいましょうか。双子の魔女?」
逃げられない。
二人はそれを理解せざるおえなかった。