PEACE
「ふふっ。今日も元気がいいのね。これ、あげるわ」
おばちゃんは小さく耳元で囁き、かごいっぱいの林檎をプレゼントした。
「実久留ちゃんにはいつも元気をもらっているから」
「わぁ! おばちゃん、ありがとう!」
林檎の山をみて、ファルコも喜んだのかしっぽを回す。
「あ、まだ食べちゃダメだからね? 城に戻ってからだよ、ファルコ」
城下街の真ん中で、林檎を食べるわけにはいかない。
そう考えた奈久留は、今にも林檎に食いつきそうなファルコにそう言い付ける。
「じゃあ、おばちゃん。私、もうそろそろ行くね!」
「あいよ~。また来なさいね~」
「はーい!」
奈久留がおばちゃんとの別れの会話をしている隙をついて、ファルコは林檎に飛びつこうとする。
だが、それは呆気なく奈久留の手により止められてしまった。
「ファルコ、ダメだよ」
「キュ~」
ファルコはうなだれた。
そんなのお構い無しに、おばちゃんと別れを告げた奈久留は、再び歩きだした。
その時だった。
――ドンッ
「きゃぁっ!」
奈久留の叫び声と共に、林檎屋のおばちゃんから貰ったかごいっぱいの林檎が地面にぶちまけられた。