千恋 第1部
今日は土曜日。
珍しく翔也が私の家に来た。
「うわぁ…きったない部屋…」
「うるさい!片付けるひまがないの!」
確かに私の部屋は、いろんな物がゴチャゴチャしている。
本棚に入りきらなくなったマンガ…
学校から配られたプリント…
…綺麗にしなきゃな…
「翔也!このお菓子食べた?」
私は発売されたばかりのお菓子を翔也に見せた。
「……まだ…」
「食べてっ!凄い美味しいよ!」
「…うん」
あれ?
気のせいかな?
翔也の元気がない。
「…本当、美味しいね」
「…翔也?気分悪いの?」
「全然。普通…」
嘘だ…
「元気ないよ?どうしたの?」
「…大丈夫。元気だよ」
笑った翔也の顔は、あきらかにつくり笑いだった。
「……本当の事言って」
「…何もないって」
ねぇ…
翔也は落ち込んでるの?
悩んでるの?
どうして教えてくれないの?
私じゃ力になれないかな?
力不足かな?
その日翔也は、何回聞いても
「何でもない」と言って教えてくれなかった。