ジェイド・ハミルトンの日記
「良かった。心配していたの、ふたりとも。毎日見ているとわからないことってあるでしょ、だから。あなたの目に映る海は、あの時と同じものなのか、ずっと心配してた」

「ふたり」

――君は。

「これを」

 それまで背中に隠していたふるいノートを僕に差し出し、少女は初めて、僕に顔を見せた。

舞。

 あの頃の舞。ジェイと出会った頃の僕たち。イタリアの海、イタリアの空。
夢を語り、未来を覗いたあの季節が、まるで帰ってきたようだった。

 その白い服もおぼえている。
星が揺れる海に、浮かび上がるように映える白。
舞の白いドレス。
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