ジェイド・ハミルトンの日記
颯太 2
 特別な旅だ。
 人類の未来をかけて、僕たちは地球を後にしたんだ。
地球時間で三十年のミッション。

 新しいエデンには実験が必要だった。
生きていくことができる星なのか。未来を委ねることが可能なのか。
そこにゼウスはいるのだろうか。

 迷わないわけじゃなかった。
与えられた拒否権は、あまりにも魅力的すぎた。
大切な家族。
そして友人。
僕を取り巻くすべての人達を、こんなにも愛しく感じたことはない。

 三十年。
いままで生きてきた時間よりも長い時間を理解することは、僕には難しい。
頭にあるのは、このすべての愛しいものに、会えない可能性のこと。

 ――空の彼方のあの星に、神話は存在するだろうか――

僕は、……だけど、自分のために、河を超えてみたかった……。

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