憂鬱ノスタルジア
「意外と広いんだな―…」
闇市と呼ばれる広場は、人間界の近くにある
そこでヴァンパイアの餌となる人間を売買しているのだ
ヴァンパイアに血を吸われたものは痛みよりも、快楽を感じるらしく
闇市には、特に妖艶な女が多い
売春屋のような雰囲気がレインは嫌いなのだ
「よってらっしゃい見てらっしゃい…!
今日は目玉商品だよ!
黒髪に金色の瞳の少女さッ……! 」
「レイン、あれだ…!」
近くで大きな歓声が上がったと思いきや、シリウスが指を指してレインを呼んだ
木で作られたステージの上には、大きな鳥籠
その中にいるのは
黒髪の美しい少女
怯えているのだろう
俯いたまま小さな体はブルブルと震えていた
ステージの下では血に飢えた下層のヴァンパイア共が、歓喜の声を上げていた
シリウスも見たことのない黒髪の少女に見入っていた
レインは衝動的に思った
"欲しい…"と。
†