憂鬱ノスタルジア
近くで見ると余計に似ている気がする
"昔 愛した女性" に
シリウスも同じことを思ったのか
レインの腕に抱かれた小柄な少女を、驚いた顔で見ていた
馬車に揺られている間もレインはジゼルを離そうとはせず、膝の上に座らせていた
「眠たいのなら寝ればいい」
レインの言葉に微かに頷いたジゼルは、ゆっくり目を閉じた
鳥籠から解放されたジゼルは、緊張感から解き放たれ一気に疲れた表情浮かべていた
「この子、顔色悪くないか…?」
目の前に座るシリウスは、どこか心配げに尋ねた
確かにジゼルの顔色は悪く、息も上がっていた
「疲れて当たり前だな」
シリウスは、こんなに他人に構っているレインを見たことはなかった
レインは顔色が悪く、ぐったりしているジゼルの頭を優しく撫でていた
「その子、どうするつもりなんだ…?」
シリウスの言いたいこと
つまりジゼルの血と肉を食べるのか、ということ
そもそも本当に、ジゼルが黄金種なのかは謎だが
ジゼルから放たれる甘く柔らかな匂いが、真実を物語っている気もした
レインは暫く考える表情をしていたが、小さく鼻で笑いながら言う
「ジゼルを喰らう気はない」
†