憂鬱ノスタルジア
「猫ちゃんが…、しゃべって…る…」
金色の瞳を大きく開けて、驚いたような顔をするジゼル
驚かれたことが嫌だったのか
"ちゃん"付けされたことが癪(しゃく)だったのか
「失礼な娘だな。
私の姿は猫なんかではない。"黒豹"だ…」
ジゼルの一言に溜め息をつきながらも悪魔のような翼を、はためかせてみせる
しかし部屋に入って来たレインが指をパチンと鳴らすと
小さな可愛らしい猫の姿になってしまった
「ノワール、ジゼルが怖がっている。離れろ」
「だからって小さい猫の姿にするな!!」
ノワールと呼ばれた黒豹は自分の変わり果てた容姿に不服そうだが、仕方なくレインに従い
ピョンピョンとソファーを飛び越えて部屋を出て行った
「まったく……。
ジゼル、気分はどうだ?」
読んでいた本をパタンと閉じたレインは
ベッドにいるジゼルに、ゆっくり近づき尋ねる
「だ、大丈夫です…」
その恐ろしいほど美しい容姿に、ジゼルは恐怖のような感情を抱きながらも小さく頷いた
†