憂鬱ノスタルジア
#
「レイン、おせ―ぞ」
「お前が急に来るからだ」
客間と呼ばれる部屋の扉を開けてみれば
優雅に紅茶を口にするシリウスがいた
仕方なくシリウスの前の席に腰掛け、スノウが入れた紅茶を口にする
「今日開かれる闇市に行かないか?」
「断る。」
「人間を闇市で売ることを、お前が嫌っているのは知ってるが
今回は訳が違うんだよ」
いつもはおちゃらけた友人が、珍しく真剣なため
レインは不思議そうに顔を上げる
「いるらしいんだ
"黄金種"が」
黄金種と聞いて僅かにレインは蒼い目を見開いた
黄金種
またの名を
─nostalty
"ノスタルティ"
古来よりヴァンパイアに愛されてきた
─血と肉を意味する種族の名前
ノスタルティと呼ばれる人間の血と肉を喰えば
誰も得ることのない
壮大な力が宿るという
言い伝えが残っているのだ
紅茶を飲み干した後
レインはゆっくり立ち上がる
「面白そうだな。」
そう言い残して
†