愛果てるまで
可憐
愛を長続きさせる方法はただ1つ…それが片思いだって誰かが言った。
これを聞いて片思いだったらどんなに良かった事かと思う。1人で相手を想っている時は幻想に浸り、相手を見ればその余韻に切なくなり…。苦しくも、それでも相手を想うことで経つ日々が楽しかった。
想いを伝え早1年…今や180度変わった心境に毎日苦しんでいる。伝える前と違うのはただ一つ。そこに経つ日々の楽しさは感じない。その代わりに経つ日々の嬉しさは感じる。まだ生きてる。生きる事に必死になっている今それは重要なことだった。
かと言って俺は不治の病でも、癌でもなんでもない。至って元気だ。
なのに死と隣り合わせ…それが最近…。

あいつと初めて会ったのは居酒屋…いわゆる「合コン」だった。
合コン自体が初めてで俺は所詮「数合わせ」でしかなかった。日常においても青春真っ直中の高校時代を男子高で過ごしたせいか、はたまた俺自身運が無いだけなのか女性に関わる機会が少なく、それまでは合コンを断りつづけていた。
そんな俺だから当然初めて会った女性と楽しく会話なんてことできるわけもなく自己紹介がおわってからは目の前に置かれた酎ハイと料理に手を伸してばかりいた。
他の奴が楽しそうに談笑しているのを眺めて居ると女性陣に1人周りになじめていない人がいた。「東郷かほり」だった。最初の自己紹介の時からあまり目立ってなかった。普段なら大して記憶にも残らない存在なのかもしれない。しかしその時、周りになじめないやつが俺の他にもいるという安心感を得るために心なしかかほりの行動を目で追っていた。その時不意に声がした。
「なに、お前アイツがいいの?」
声の主は中村忠。この合コンに俺を誘ってきた奴だ。かなりの合コン好き…いや女好きでこいつの用事といえば合コンかデートといったところだ。
「いや別に」
そっけなく答えた俺に中村は
「そんなこというなよ。気に入った娘がいたらメアドを聞く。これが合コンの常識だよ。わかるか?」
「はいはい、わかりますよ」
俺はめんどくさくなって適当に聞いていた。そんなことをしていたら東郷は女友達によばれてどこかに行ってしまった。しかし大して気にする訳でも無く、唯一の心残りは仲間が居なくなってしまった事くらいだった。仕方が無い、独り悲しく酎ハイと料理に没頭するか、などと思いメニューに目を向けていた。
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