愛果てるまで
同棲を始めて数日して、かほりが友達を家に連れてきた。
そういえばかほりはあまり友達の話をしないな。それを言うなら俺もだけど。
その友達は静子と名乗った。
静子は名前とは正反対で随分と賑やかだった。俺とかほりが静かな分、静子が話す機会は必然的に多くなったせいかもしれないが、たとえ俺たちがよく話す人間だったとしても声が大きいので賑やかに感じただろう。
そんなかほりとは正反対の性格なのだがかほりと静子は古くからの付き合いらしい。むしろかほりと静子の性格が違うからこそ長く関係が途絶えなかったのだろう。もし静子が賑やかでなかったらかほりとは会話が成立しそうにない。俺の場合はなんとか成立しているが。かほりは楽しそうに静子と会話をしていた。俺はというとそんな二人をただただ眺めてるだけだった。もともと女性とよく会話をするほうではないので話に入りづらかったのだ。だから俺が静子と初めて会話と思える会話をしたのは、かほりがトイレに行くために席を外した時だった。
「ちょっと席はずすから、二人で話してて」
といってかほりは席を外したがしばらくお互い気まずいままだった。そんな空気を破ったのは静子のほうだった。
「あの子とうまくいってます?」
いきなりの質問としてはあまりにも唐突な質問だった。少しむかっとして見ればわかるだろと言いたかったがやめておいた。
「おかげさまで順調ですよ」
「そうですか・・・それならよかったです。」
そしてからまた少しの間沈黙が続いた。嫌な感じの沈黙のような気がした。だけど本来は全く女性と話さないから、そういう特有のものかと思っていた。
「あの子に…なんか違和感とか感じてません?」
何を言ってるんだ?こいつは。
「感じるわけないだろ。何が言いたいんだ」
「別にそんなんじゃないのよ。だけど」
俺も感情てきになって机を叩いて言った。
「だけどなんだよ!感じ悪いな。何が言いたい!」
「私が言いたいのは…」
ガチャ
ドアが開いてかほりが帰ってきた。
「すごい音したけど、どうしたの?」
すごい音はたぶん俺が机のを叩いた音だろう。俺が反応するより早く静子が反応した。
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