プラチナの誘惑
はかない夢をみる事はとっくに諦めて。

姉さんの次…陰…。
誰も私を一番目に見てくれない寂しさにも慣れた
日々を過ごしてきた私。

母さんにも父さんにも与えてもらえなかったものは多くて、振り返ると胸が痛むけれど。

それでも温かく優しい気持ちがよみがえる風景がひっそりと、私の中に
残っている。

「…私はシールでしたよ」

哲人くんに薄手の布団をかけていた逢坂さんは、私の言葉に怪訝そうに視線をあげた。

私は、綺麗に色づいた指先を見せながら

「今は自分でこうやって
マニキュアで花を描いてますけど…

小さな頃は、毎朝母が小指に花のシールをはってくれてました」

ふふっと笑うと、その時に私に向けられた母の笑顔がよみがえってくる。

「寂しくないように…勇気が出るようにって言いながら貼ってくれました」
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