プラチナの誘惑
マンションの敷地内にある駐車場に車を入れた時にはもう午前2時を回っていた。
エンジンを切っても助手席で固まったまま動かない彩香のシートベルトをガチャっと外してやると、瞬間びくついた体に…どれだけ緊張しているのかがわかって罪悪感も感じる。
俯いて、膝の上で握り締める手をそっと掴んでも視線を俺に向ける事もなく。
「…15階だから。逢坂さんの家には負けるけど
結構な夜景だぞ」
冗談にならない雰囲気の中でそう言ってみても、流れる空気は変わらなくて。
小さく息を吐いて、彩香にすっと唇を落とした。
触れるだけにとどめて、驚いて見開いた目を見返した。
徐々に溢れてくる涙をこぼさないようにこらえる瞳。
吸い込まれるように感じ
る俺の気持ちが根こそぎ彩香に持っていかれる。
今までにないくらいに跳ね上がる鼓動を心地好く思う自分に驚き、そして納得してしまう安堵感。