プラチナの誘惑
気持ちが決まらない彩香を、殆ど勢いだけで部屋に連れてきた。
玄関に靴を脱ぎ捨てて、抱えるように。
「ちょっと…昴困るよ…。私…帰らなきゃ」
腕の中で泣きそうな声を出す彩香をリビングに連れていき、ソファに座らせた。
「昴…」
ずっと悲しそうにしてるな…。
逢坂さんの部屋から連れ帰る頃から笑わなくなった彩香。
今までも、俺のキスや言葉が理解できなくて困り果てた様子は見せていたけれど、その戸惑いの向こうには確かに期待と、少なからず嬉しさも見えていた。
今日、営業部の飲み会からの帰りに迎えに行った時にも、どうして俺が迎えに来るのか訳がわからず困ってはいても。
拒否することもなく、照れながら…その照れを必死で隠しながらも、口元は嬉しそうに上がっていた。