プラチナの誘惑



「来週には全ての確認も終わるから。
引き渡しはすぐだな」

「…わかった。急がせて申し訳ない…。
葵ちゃんといい小椋さんといい…日和ちゃんにも無理ばかり言ってしまって、感謝してる」

…軽く頭を下げる野崎さん。

2階の、きっと子供部屋にするに違いない部屋を見回しながら、何度もお礼の言葉を口にする。

桜色の壁紙には、同系色の花が大小たくさん散りばめられていて、ふんわり優しい部屋になっている。

「…柚さんが選んだ壁紙…かわいいでしょ?
病院で見本帳を何度も何度も見て…お腹の赤ちゃんにも

『この模様かわいいね』

とか聞きながら決めてたんですよ」

心なしか震えているように聞こえる日和の声にはっとして見ると、うっすら涙ぐみながらも我慢して笑っている…。

隣の小椋さんは呆れたように軽く息をついて、日和の頭をごつんと優しく叩いた。

…ん?
小椋さん…が優しく見えるなんてイメージじゃないけど…。日和からも厳しい上司だとしか聞いてないし。

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