プラチナの誘惑

小椋さんと日和…って。
何だか空気感が違うけど…。
ん？

そんな私の疑問も、野崎さんの言葉で一瞬で忘れてしまった。

「日和ちゃんが、柚といろいろ決めてくれて…わざわざ病院まで通いつめてくれて…感謝してる。

柚もこの家に…元気に…子供と一緒に暮らせるように頑張ってるから。

その時には来てやって欲しい…」

最後の言葉は、聞き間違いなんかじゃない。
野崎さんも涙を堪えてる…。

流れない涙が身体の中に溢れていて、悲しい想いを必死で堪えているように両手はぎゅっとにぎりしめられている。

何がそんなに悲しいんだろう…。
この部屋にいる小椋さんも日和もどう見ても明るい雰囲気なんてないし…。

話からすると…柚さんは妊娠しているようだけど、おめでたい事なのにどうして…？

しばらくして、ふっと力を抜いて、穏やかに笑っ
た野崎さんは

「日和ちゃんからもらった布絵本を作った人かな…？」

そう言って、私に話し掛けてくれた。