プラチナの誘惑
「彩香の両親って医者だったよな?」

「あ…うん」

突然聞かれて、少し驚いた。
これまで私自身の事や昴自身の事はあまり話題にしなかったし。

それでも、夕べ昴が私に見せた弱さはあまりに意外で…昴の普段見せる強気な態度の向こうにある不安定な部分を初めて知った。

親の会社の名前が生む影響や昴の見た目の良さも彼にしてみれば、単純な利点にはなっていなくて。

かえって辛い想いをする要因になっていたと…。

感情の溢れるに任せて吐き出される言葉が、夕べの私の全てを支配していた。

だから流されて抱かれた訳じゃないけれど…。
昴の悲しい表情と言葉がなかったら…昴に飛び込む事はなかったかもしれない。

どこかに。

私の持つ弱さやふがいなさ…抱えているしかできない重荷…。
生きていく中で負の部分として受け入れるしかないものに、同じ影を感じたから。

昴に抱かれたのかもしれない。
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