プラチナの誘惑
少し遠くを見ながら歩く昴は、言葉を選びながら

「俺自身の背中に、親父の会社の名前をいつも見られるなら…どうせなら継いでどっぷりとはまったら割り切れるかなあとか考えたりも…する」

ははっと笑う声は、笑い声にはなってなくて、どこか乾いている。

「それでもやっぱり、今の仕事が天職なんだけどな」

建築…。
昴にとっては仕事じゃなくて生きる為に必要なもの。
図面や模型だけじゃなく、建築された物件を見てもその才能はすぐにわかる。

「お父さんの会社がどれだけ大きいか知らないけど…」

うまく言えるのか…自分でもわからなくて、ゆっくりになってしまうけど…。
昴の顔を見ながら言葉をつないでみる…。

「昴がへらへらと女の子と遊んでたり、本気がどこにあるのかわからない飄々とした態度でいるのは知ってるけど…」
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