プラチナの誘惑
「…そうかな。

私に医者になれって言った事ないけど…。
まぁ、成績がついていかなかったし。

高校も美術科選んだから…諦めたんじゃないかな」

「まあ、医者だもんな。なりたくても簡単にはなれないよな」

あっさりと笑うと。

「…彩香が医者にならなくて良かった」

小さな声で。
確かに聞こえた言葉の意味がよくわからなくて首をかしげると

「俺も…親父の会社継がなくて良かったよ」

そんな言葉も加わって…更によくわからないけれど、相変わらずつながれている手の強さから伝わるのは…幸せな温度。

抱かれて変わった私の体と気持ち。

好きだから…それだけで抱かれたなんて綺麗事は言わない。
思い込んでいた昴の姿とは掛け離れていた切ない昴に、私の心はすっかり堕ちてしまった。
あっけなく。

私にも漂ってるだろう諦めみたいな空気も感じたし。

それがきっかけ。
< 193 / 333 >

この作品をシェア

pagetop