プラチナの誘惑
しばらく私を見ていた昴は、目の前の引換券の包装をお願いして。

「待ってる間うろうろする?」

疑問形なのに、私の答えを待たないままにさっさと店内のショーケースを見て回りはじめた。

私を手招いて呼び寄せる昴の横に立つと、周りを少し気にした後

「野崎邸だろ…?」

囁いた。

自然な仕草で私の腰を引き寄せると、二人の体を密着させてショーケースの中の指輪を見る一連の動きに、一瞬緊張するけれど。

『彩香の気持ちも俺にくれ』

さっき抱きしめられて、
そう言ってくれた昴の言葉が蘇って。
…少しぎこちなく。

ゆっくりと昴に体を預けた。

見上げると、口角を上げて優しく笑う昴と目が合った。
今までも、側にいて見つめられる事はあったけど、どう受け止めていいのかわからなくて戸惑ってばかりだったけど。

ちゃんと自惚れて、普通に見つめ返していいよね…。

素直に、昴から伝わる温かさに浸った。
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