プラチナの誘惑
黙り込む私の隣の昴も、何かを考えてるように無口なまま、ショーケースを見ていた。
二人してただ、宝石達の輝きに満たされて。

幸せな時間だな…。
二人でいるのがこんな風に自然に思えるようになっていけばいいのに。

なんて考えながらいると。
なんとなく思い出すのは。

「どうして野崎邸だってさっきわかったの?」

そう…桜吹雪がデザインされた硝子の引換券を見た後に言った私の言葉に反応しながら…周りを気にしながらもすぐに言い当てた昴。

「…設計部ではみんながあの物件の完成を楽しみにしてるんだ」

「…え?どういう…」

「相模さんがリーダーになって…設計部内総出で設計したんだ…」

声も小さくささやくように。
表情にも陰りがある。
苦しそうに私を見る視線にはためらいさえ感じるのはどうして…。

「マスコミに漏れないように完全な箝口令」

秘密って事…?

「日和と小椋さん…二人がメインで野崎邸を作ってる…。
多分かかりきり。
だから…日和の現場って聞いてすぐわかった」

小さくため息をついた昴の腕に力が入って、私の体は更に密着…。


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