プラチナの誘惑
「昴…?」

胸に抱え込まれて動けない…。

あっけらかんと…飄々とした昴の顔ばかりを見てきた私には、夕べから見せられる真逆に近い色々な吐息や瞳を受け入れながらも…完全には理解できない。

「…家を建てて…。
それも、設計部総出の仕事。
赤ちゃんも産まれるし。
幸せいっぱい。
それなのに…野崎さんもみんなも何かを悩んでる…。

どうして?」

少し弱くなった昴の腕に、そっと私の手を置いた。
感情の読みにくい昴の目をじっと見る。
ためらいながらも…何かを言いかけた時。

「お待たせしました。
包装できましたよ」

店員さんの明るい声が聞こえて…昴は苦笑しながら口を閉じた。

「…帰ったらゆっくり
話すから…」

何か。

はっきりとはわからないけれど、実際に会った野崎さんの様子を思い出しても、切ない顔しか浮かばないし。

日和だって…いつもと違って考え込んでた…。

昴から聞かされる話は
多分楽しい話じゃないんだろうって…。
昴の背中に漂う雰囲気がそう語っている…。

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