プラチナの誘惑
ふふっと笑顔を見せながら、俺の前まで来ると。

「さっき誤解させちゃった彼女にあげてちょうだい。
完売しちゃってネットでかなりの値段で売買されてるのもあるし」

はいって手渡された大きな袋には、

『sweet sweet』

の服が詰め込まれていた。

「早く事情を話して誤解を解いてね」

「…わかってるよ。何も疑われる事なんてないし大丈夫」

そう言ってはみたけれど。
彩香の携帯に電話をしても、側にいる日和が出て彩香に変わってもらえなかった現実は…かなりハード。

「ねえ昴…」

「ん?」

ほんの少し真剣な顔と声の芽実さんは、

「私、将来の社長婦人なんて望んでないの。
ただ毎日服を作っていられたらそれだけで幸せ」

突然そんな話を始めた。
にっこり笑う姿には強気なデザイナーの顔と、何かに満たされている女らしさも感じられて。

話す内容と違う明るさが表れている。
< 221 / 333 >

この作品をシェア

pagetop