プラチナの誘惑
そう言って、兄貴に寄り添う姿は幸せに満ちていて。

抱き寄せる兄貴も同じ表情が表れている。

親父の会社のような大きな規模の会社ともなると兄貴の結婚にもあらゆる方面から意見が出てきて単純な話ではなかった。

それでも、芽実さんだけは諦めずに手放さなかった。

会社の役員達の思惑を封じ、芽実さんの将来を左右させても、妻として側に置く事を選んだ。

「今まで諦めた色んな事へのご褒美が、芽実に愛される事なら、俺の人生悪くない…」

結婚してすぐに、何気なくそうつぶやいた兄貴。

そう。

芽実さんは兄貴への大切なご褒美。
愛し合う二人の姿に胸が熱くなって…かなり羨ましい。

ぼんやり二人を見ている俺の中にふっと浮かぶのは、やっぱりあの笑顔。

不安げに見つめてくるあの瞳を見ながら抱き合った夕べを思い出して切なくなる。
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