プラチナの誘惑
ずっと胸の奥に隠して見ようとしなかった俺のためらいは、欲しいものを欲しいと言ってはいけないと暗示をかけていた。

小さな頃から自分の好きに時間を使い、やりたい事はなんでも試す事のできる経済的な余裕。

両親の理解をいいことに
人生ってなんて楽しいんだと、兄貴の諦めばかりの人生の裏側で好きに生きてきた。

大学生活を満喫し、建築関係の仕事に就きたいという俺の希望を後押ししてくれたのも兄貴。

『…会社は俺が継いで守るから、せめて昴には好きな職業に就かせてやってくれ』

口うるさい役員達の

『たとえ次男でも、会社経営をサポートするべきだ』

という意見にもそう言って頭を下げてくれた。
…それを知ったのは、大学を卒業してすぐ。

父さんから教えられたその現実…。
まだまだ学生気分のままに就職したばかりの春。

頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
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