プラチナの誘惑
俺から見ても、社長の器には十分な資質と人間性を兼ね備えた兄貴を、尊敬してはいても育てられ方が違ったせいか距離を持って接していた俺。

そんな俺の将来を俺以上に考えてくれ…。

会社という背負い切れない大きな荷物を一人で守ろうとしてくれた兄貴の想いを知って。

単純に欲しいものを欲しいと求める事ができなくなった。

兄貴の人生の中に、何か幸せだと思える何かが生まれて…本当に笑える毎日を過ごしているとわかるまでは、俺も…。

欲しいものを諦めなきゃいけないと、無意識に思っていた。

俺が本当に欲しいもの…

三年近く胸に秘めたままにしていた温かく…切なく…鼓動が跳ねるもの。

彩香…。

兄貴の人生を踏み台にして、俺だけが幸せや希望通りの人生を送る事への遠慮や罪悪感。


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