プラチナの誘惑

俯いて、合鍵をぼんやり見ながら…色んな想いの中を行き来していると
相変わらず淡々とした口調で、日和に声をかけられた。

「そのキーホルダーって、家族限定用で作られたと思うよ」

「え？」

「ちょっと見せてね」

私の足元のキーホルダーを手にしてじっと見ていた日和。

手に取って、裏に刻印されている文字を指でなぞりながら

「やっぱり。

これ、昴のお父さんの会社の創立50周年かなんかで記念に作られたキーホルダーだよ。

家族用に一人二個ずつと、創立以来のお得意様とかにしか配られてなくて…マニアは喉から手が出るほど欲しがってる貴重な物」

ほんの少し興奮気味に話す日和の手の平にのっているキーホルダー。

どれだけ貴重かはなんとなく理解できるんだけど…昴のお父さんの会社…の創立記念…？

思ってもいなかった日和の言葉を頭の中で整理してみる…けど。

「お父さんの会社って…？」