プラチナの誘惑
テーブルの上に置かれた昴の手に、そっと私の手を重ねて。

「…本当に真田さんには悪い事をしちゃったんだけどね…」

日和を巻き込んで、ややこしくしてしまったお見合いを、結局は全てなしにしてしまわなきゃいけなくなって。
心底申し訳ない…。

何か言いたいだろう気持ちを抑えながら…。
たどたどしい口調で、事の経緯を話す私から目を離さない昴。

「…夕べのうちに真田さんに連絡しようと思ったんだけど…。
結局忘れたままだから、早く連絡しなきゃ」

時計を見ると10時をとっくに回っている。
お見合いは11時からだったと思う…。

慌てて、側にあった携帯を開いて真田さんにかけようとしていると、すっと伸びてきた昴の手が私の携帯を取り上げた。

「…何?電話しなきゃ
いけないんだけど」

慌てる私の声を聞き流すみたいに無視して、不機嫌な顔で。

「これでかけろ。番号登録してあるから」

自分の携帯を差し出した。
結構勢いよく差し出された携帯を、思わず受け取ったけれど、意味がわからない。
私も、真田さんの携帯番号は登録してあるのに。
一緒に連絡先を交換したから知ってるはず…。

訳がわからないままじっと、昴の携帯を見つめたままでいると。

「俺の名前が向こうの携帯に出るから。
それで、俺との関係を
察してくれるだろ」
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