プラチナの誘惑
「彩ちゃんはもうすぐ
営業部に来るのよ」

心なしか、自慢げにそう言う逢坂さんに、違和感を感じていると、

「そうなんですか。
営業部が落札した訳ですね…。
あ、ごめんなさい。
落札っていい気持ちじゃないわよね…。
でも…ふふ。
残念がってる色んな顔が浮かんでくる…」

言葉が伝える意味以外に何の裏も感じさせない優美さんの言葉と表情が、彼女の素の姿を見せている。

裏表のないあっけらかんとした性格。

今思い出し笑いをする声も瞳も、ただ今を楽しいと感じているだけのような気がして…私にも気をつかっている事もわかる。

昴が好きになって、忘れられない人。

今目の前にいる綺麗な女性がまさにその人…。

「色んな部署が森下さんの事を呼びたかったのよ。何か情報くれって泣きつかれた事もあったし。
営業部が嫌になっても大丈夫だからね」

広がる優美さんの笑顔に
刺激されたかのように。
どんどん大きくなる私の中の黒い感情…。

今まで、私の中にこんなに重苦しい感情が潜んでいるなんて思わなかった…。

優美さんが素敵な人だと知りたくなかった。
昴にとっての特別な人を私が超える事は無理だって…知りたくなかった。
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