プラチナの誘惑
そんな私の葛藤なんて知らずに、逢坂さんの明るい言葉は続いて。

私が優美さんに抱いた印象を裏付けるような言葉が次々と飛び出してくる。

「優美ちゃんはね、受付でお客様と社員を取り次ぐだけじゃなくて、お客様の様子や気になる事を社員に予め伝えたり。

訪ねられてきた社員以外にも同席した方が仕事をうまく進められるって思ったら、とりあえず内線で連絡したり。
その為に、あらゆる部署の業務内容を勉強したり社員についても、かなりの情報をつかんでいたのよ」

歯切れのいい言葉が私の心を少しずつ落としていく。
優美さんの事を褒める逢坂さんには、何の下心も想いもなくて、ただ純粋にそう思ってるのがわかって逆に私にはつらい。

「今までお飾りだった受付嬢のイメージは、優美ちゃんが努力したおかげで消えてしまったし。
彼女が退職した後も、その姿勢は後輩が受け継いでるの。
まさにカリスマ。
ほんと、あんな玉の輿じゃなかったら退職なんてさせなかったのに」

残念そうにため息をつく逢坂さん…。

あんなにおいしく感じていたお肉の味も感じられなくなって…。

逢坂さんに向ける笑顔が不自然に見えないようにただそれだけに集中した。




< 276 / 333 >

この作品をシェア

pagetop