プラチナの誘惑
「昴はある意味普通じゃない境遇で育ってきたからな…。
そんな過去も今もちゃんとわかってやってくれ」

低く真面目な声に顔を向けると、優しく笑う小椋さんと目が合った。

「あの受付の女と付き合ってたのも昴の過去の一部だからな。

気になるのは仕方ないけど、終わった過去を気にして今や未来を無駄にするな」

「…」

「ま、俺だって日和の前に誰もいなかったなんて言えないしな。
それは日和だってそうだから。
でも…やっぱり日和の昔の男を見たらいい気はしないだろうな」

くっくっと苦笑しながら運転する小椋さんは、本当に不機嫌そうにため息をついて

「…日和には言うなよ」

普段は見せない感情が顔に表れてほんの少し照れながら。

何だか日和と小椋さんが付き合ってるって事を、初めて実感した…。

ちゃんと日和を愛してる言葉や仕草。

そっと私も微笑んだ。

昴の事を考えて、幸せに思える自分の心を一番に大切にしよう…。

そう思いながらいるうちに、車は病院に着いて。

今まで感じた事のない緊張感で心臓は壊れてしまいそうになった…。
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