プラチナの誘惑



「本当、お姉さんに負けず劣らず綺麗ね」

優しく声をかけられて、ふっと緊張の一部が溶けた気がした。

ベッドの上に起き上がって笑う柚さんは、点滴を受けながらにっこり笑って…傍らに積んである絵本を大切そうに読んでいた。
明るい日差しが柚さんを包んで、ふんわりと存在する様子はまるで天使のように美しく…これまでマスコミが流す写真よりも神々しかった。

「相模さんから連絡があったから楽しみにしてたのよ、布絵本の新作」

ふふふっと笑う声に引き付けられるようにベッドに近づくと、更に美しく穏やかな柚さん…。

ふくらんだお腹を優しく撫でながら、

「桜も楽しみにしてるはずなの」

「さくら…?」

「そう、お腹の子…桜って名前なのよ」

「女の子なんですか?」

じっとお腹を見つめてしまう私に笑いかけた柚さんは、ほんの少し寂しそうな口調で…。

「本当なら桜の満開になる頃に産まれるはずだったから」

「桜…」

俯いてお腹を見つめる柚さんに、今どんな気持ちが溢れているのかわからなくて…私の体も動けないまま…、ただ…息をつめていた。
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