プラチナの誘惑
もうすぐお昼休みも終わる。
こんなはっきりしない男に割く時間がもったいなく思えてきた。

相変わらずの読めない表情を私に向ける昴の手からリストを奪い返すと

「もういいから。
宣伝部の後輩つれてくからいい」

溜息混じりに言い捨てて
昴に背を向けた。

私は昼食もまだなんだって。
今からじゃ、食堂も大したメニュー残ってないだろうな。

はあ。
ついてない。

私が甘かったんだけど。

午前中から長引いていた会議が終わった後、食堂までの階段でたまたま見つけた昴。

いつもと同じ。

飄々とした顔で降りてきた。
設計部の人達。女の子も交えて。
食堂からの帰りらしい昴に声をかけた私が甘かった。

昴が面倒な事を引き受けるなんて、ありえない。

一緒に買い出し係になった時から半分諦めてたのに。

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