プラチナの誘惑
目が覚めた時も、窓の向こうに見えるのは暗い夜空。
昴に抱きしめられながら、まだこうしてベッドで一緒にいられると思うと嬉しくなる。
身体のあちこちは、まだ痛みや熱をもったままで、少し照れくさい。

「…悪かったな…優しくできなかった」

「え…?」

視線を上げると、心配そうに私の頭を撫でる昴と目が合った。

「平気…。まだまだ昴の経験には敵わないけど…頑張るから…」

ぎゅっと昴の身体にしがみつくと、同じくらいに抱き返してくれた。
それだけでホッとする…。

「…無理しなくていいけど…俺しか知らない身体だと思うと歯止めがきかないんだ…。
嬉しいし…神聖な気持ちにもなる」

「…」

「なあ、もう誤解は解けたんだよな…『忘れられない女』」

あ…。

「うん。大丈夫…」

…そう、誤解っていうか…早く聞いていれば良かった。

『忘れられない女』って確かに優美さんの事だった。
逢坂柊さんに話していたのも優美さんの事。
その事自体に間違いはないけど…。

くすくす肩を揺らしながら笑う昴は、私を抱きしめたままに嬉しそうな声で。

「勘違いだったけど…嫉妬してくれてたってのがかわいい」

…本当…勘違い。

「でも、あんな言葉聞いたら誰だって勘違いするよ。…本当に悲しかった…」

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