プラチナの誘惑
「ごめんごめん。
でも、
『玉の輿にのりたいから結婚して』
なんて真っ正面から言われたら、その女の事は一生忘れられないだろ」

笑う声には、優美さんへの優しさも含まれているようで、ほんの少し妬ける。
まさしく優美さんならそんな直球で裏のない気持ちを直接ぶつけてくるかも…ってわかるから、なんとか気持ちを落ち着かせるけど。
それでも、昴から他の女の人の話が出るのはいい気分じゃない…。

「で、結婚しようって思った?」

昴の胸に、小さな声で問いかけた…。拗ねながら…。

「女の見てるのは親父の会社だって何度も思い知らされてたからまぁ、してもいいかなとは思った。優美ならそれなりにうまく付き合えるかとも思ってたし…。
でも…」

ん…?

何も話さなくなった昴の胸から顔を上げて、ベッドに片手をついて起き上がると、切なそうに私を見ている昴の視線…。

「どうしたの…?」

そっと昴の頬を撫でると、その手を優しく掴まれて…熱い唇に持っていかれて…。
ゆっくり思い返すような声。

「ニューヨークで…彩香を見た後は、そんな中途半端な気持ちを抱え続けるなんてできなかった。
…優美と一緒にニューヨーク行ってるのにな。
もう彩香が欲しくて欲しくて…。
優美とは日本に帰って来てすぐに別れた」

最後は、自嘲気味な虚ろな声と表情が苦しそうで、私も何だか切なくなった。


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