プラチナの誘惑
「だからって…彩香に気持ちぶつけるわけでもなく…曖昧に過ごしてたんだ。大した男じゃないんだよ、俺は」

ははって笑ってるけど…
口元は堅い。
どこか無理してる…。

「だから、あの『虹』の絵を気に入ってくれてたってのは…限りなく救いなんだ。
悶々といろんな事悩んで踏み切れなくて彩香をただ見てただけの時間を、俺の絵が彩香の癒しになってたって…奇跡だな」

しっかりと想いを繋いでいく昴から伝わる初めての安心感が私を包んでいく。
入社してから保っていた距離が一気に縮まる。
いつも私とは違う世界で生きている別格の男だと醒めた気持ちで見てた。
それでも、昴の人間性や設計の才能を知るうちに惹かれていってた。

惹かれる自分に気付かない振りをして、感情の中から期待という慣れてないものは排除して。

それでも、やっぱりどんどん気持ちは昴のもとへ向いていった…。

そんな私の気持ちに嫌でも気づいたのは

『忘れられない女』

だった。

「昴の中に優美さんはずっと記憶に残るかもしれないし…いい気はしないけど…。

私は絶対的な一番になりたいの」

「…どういう…?」

普段見せない強い私の口調に、心なしか驚いてるみたいな昴。

それでも、今は、この慣れてない安心感という勇気に力を借りて、自分の気持ちをちゃんと言わなきゃならないって。
必死だ…。


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