プラチナの誘惑
「昴に私の事が好きだって言われた時…すごく嬉しかった。
私も好きだから…。
本当に…。
でも…。

いつも寂しかった」

胸に留めていた重く悲しい気持ちにも蓋をしてた。

「柚さんと野崎さんを見て…好きな人の側で笑える未来があるって…ただ生きて幸せな毎日を過ごせるなら…私の寂しさは我慢しようって本気で思ってた」

「彩香…」

ベッドに起き上がった昴は淡々と話す私を胸に抱き寄せると、軽く唇を重ねた。
私はふふっと軽く笑うと
昴の背中に腕を回した。

「こうして…体温の温かさを分け合えれば…好きって言ってもらえるならそれで満足だって…今も思うけど」

「…けど…?」

「欲が出ちゃうの。
優美さんに対する本当の気持ちを知ったら…私が昴にとっての一番になりたいって…誰よりも大切に思われる存在になりたいって求めてしまうの…」

こぼれる言葉は、昴へ向けているけれど、同じくらいに私自身にも流れていく。
漠然と寂しいって…思いながら、そんな事よりも昴が私を側に置いて大切に愛してくれる事を幸せに思わなきゃってごまかしてた。
たとえ昴の心に忘れられない女の人がいても。
今は私を大切にしてくれるなら…我慢しようって。

「一緒にいたいし抱いて欲しい。愛してるって言って欲しい。

誰よりも…一番に…他の誰かの代わりじゃなくて私自身だけを見て」

…姉さんの影で寂しかった私の想いも混じるような、途切れ途切れの声。

一旦こぼれ出すと止まらない本音が、誰よりも私を驚かせる。

あぁ…こんなに私は昴に愛されたいんだな…。
昴にしがみつく幸せの中で確認してしまう。
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