プラチナの誘惑



朝、二人して急ぎ気味に出勤の準備をして。

寄り添うように昴の部屋を出た。

昴の部屋に私の私物や着替えが少しずつ増えて、二人して出勤する事も違和感が少なくなってきた…。

駅までの5分だって、今は私にとっては当たり前の通勤風景になりつつある。

手を繋いで、些細な話題に口元を緩めると、身体の中いっぱいに力が生まれてくる。
お互いの存在が、お互いを幸せにできる…。
まだまだ完璧な二人じゃないけれど、同じ空気に包まれて微笑み合える毎日が、少しずつ堅い絆を作っていってる。

「抽選で、俺ら三年目も商品ゲットのチャンスはあるんだよな…?
やっぱ狙いは…」

隣でぶつぶつ言ってる昴の表情は、ここ最近穏やかで、何かふっ切れたような…晴れ晴れとしていて。

更に気持ちを持っていかれてる私…。

大学時代の昴を知っている逢坂さんが前に言っていた…会社で再会した時の昴は変わっていた…
っていう言葉を思い出す。

きっと。

ずっと昴のお兄さんに対する遠慮や…引け目…申し訳なさ…が昴を変えてしまったんだろう…。

全てを聞いたわけじゃないけど、お兄さんの犠牲の上で自分だけが思うままに生きて、欲しいものを手に入れるなんてできなかった…と。

その気持ちが、私を自分の側には置いちゃいけないという呪縛に繋がっていたと…。

苦笑しながらも、私を優しく抱きながら打ち明けてくれた…。

その顔はきっと、逢坂さんが知っている大学時代の昴と同じはず。
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