プラチナの誘惑
どう見ても、愛し合って幸せオーラを放つ昴のお兄さんと芽実さん。
羨ましいくらいにお似合い。

『…兄さんが幸せで…俺にも幸せになれる時間がようやく来た…』

ふと漏らした昴の本音が胸を痛くするけれど…。

『私だって、かなり幸せ』

じっと視線を合わせて言う私を、これでもかってほどに強く抱きしめてくれた。

愛してるよ…。

何度聞かされても嬉しい言葉と一緒に…。

「…聞いてるのか?
サイズは何号なんだよ」

は?

ぼんやり歩きながら、私を見続けるだけだった理由を話してくれた夜を思い出していると、繋いだ手を突然引っ張られた。

「ちょっ…突然どうしたの…?」

バランスを崩した私の肩を抱きながら、拗ねた顔をしている昴。
ふっと肩を竦めて

「だから、サイズ」

「…小さいの、知ってるくせに…」

「はぁ?」

訳がわからないって顔の昴の大きな声に、私の方が訳がわからなくて。
しかめてしまった顔で、昴の次の言葉を待ってみるけど。

「なんだよ…。聞いてないのかよ…」

私の首筋に顔を埋めて、情けないくらいに力のないため息…。

「…昴?」

立ち尽くしたままで、探るように声をかけてみた…。
今更…私の胸のサイズなんて聞いてどうするんだろ…。
自慢できるには程遠い大きさだって知ってるのに。

「違うし。胸じゃねえから。小ぶりで慎ましいってのは知ってるし気に入ってるし」

ぼそぼそ呟く声に、私はどう反応したらいいんだろ。
突然…心臓だって狂ったみたいにとくとくっていってる。

「俺が聞いてるのは指だ。指のサイズ。
鈍いようだから具体的に言う」

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