プラチナの誘惑
ふうっとため息をつく彩香は、それでも楽しそうに写真を選び出している。

「それが終わったら飯食いに行こう」

「…え?」

「もう終わるんだろ?
飯食いながらコメント考えよう」

普段二人で過ごす時間なんて持たない俺の言葉にかなり驚いている彩香が何かを言う前に、

「玄関で待ってるから。
あ、居酒屋でいいだろ?」

ほとんど言い逃げで、宣伝部を後にした。

見るだけでいい…。

そう思いながら三年近くを過ごしていた俺の中に生まれた焦り。

他の男の影を感じない安心感をいい事に、何も動かなかった俺に残された時間は週末までなのか…。

見合いするなんて、ずるいだろ。

…は…。

ずるいも何もないか。

俺とは何もないんだから。

それでも、今更でも近くにいたいと思う俺の中に余裕なんてないんだ…。
< 39 / 333 >

この作品をシェア

pagetop