プラチナの誘惑
思わず舌打ちしそうになるけれど、子供の頃から厳しく育てられてきた年月がそれを止めてしまう。

舌打ちしてる姿を見られでもしたら、母さんのビンタが情け容赦なく浴びせられるはず…。

…洗脳されてるなぁ…。
思わず浮かぶ苦笑い。
本当、私って成長してないっていうか堅いな。

「おいっ。彩香っ」

ようやく食堂のある14階に着いた時、階段を駆け上がりながら私を呼ぶ昴の声が聞こえた。

振り向くと、階段を駆け上がってくる昴。
不機嫌な顔を隠そうともせずに近づいてくる。

「話は最後までちゃんと聞け。
…とりあえず飯まだなんだろ?
行くぞ」

さっさと食堂に向かう背中を呆然と見ながら、ため息をついて後を追った。

本当…いつも自分のペースを崩さないわがままな男…。

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