プラチナの誘惑
何事もなかったような声を聞いて…。
さっき。
お店の前で交わしたキスがまだ続いているような気がして…唇が熱い。

昴の唇を見てしまいそうになる気持ちを抑えながら、目の前の絵に気持ちを集中しようとするけれど、昴の体温が気になって仕方がない。

「この絵描いたの、あの人」

昴の視線の先には、40歳くらいの男性。
肩幅が広い、しっかりとした体。長身でたくましい…。
カウンターの中で料理を作る笑顔は明るく穏やかで、思わず見とれてしまう。

「なかなか格好いいだろ」

「うん…。この店のマスター?」

「ん…マスターっていうかオーナーっていうか。
趣味でやってるらしい」

言いながら、オーナーに向かって歩く昴の後について行きながらも店内の内装やテーブルが気になってしまう。

居酒屋っていうイメージのない店内は、まるで美術館のように私の気持ちをひきつける。

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