プラチナの誘惑
「…昴も建築だもんね。
ニューヨークに行っても不思議じゃないか。

ふふっ。声かけてくれたら良かったのに」

うん。多分入社一年目と二年目だったあの頃。
同期みんなで仲良くやってたし…声かけてくれてたら

「ご飯でも食べに行ったのに」

お酒のせいかな…。
いつもより言葉が簡単に出てくるし、頬も緩んでる気がする。
きっと素面なら、個人的な付き合いなんてない昴にこんな事言えないはず…。

「…酒、弱いんだな。
いつもよりかわいいな」

すっと伸びた指先が、私の頬にかかった髪をかきあげてくれる。

「そんなに強くないけど…まだ酔ってないよ」

ははっと笑うと、昴の目が疑いを含んで細くなった…。

あぁ…この目に女の子達はやられるんだなあ。

いつも女の子との噂が絶えないのもわかる。
こんなに優しい目でじっと見つめられたら、すぐ勘違いしてしまうよ…。

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