プラチナの誘惑
「ニューヨークで見かけて、声かけようとしたんだよな。

でもお前、作品に夢中で声かけられる雰囲気じゃなかったし。

俺はストーカーのように遠くから見てたの」

ん?

と寄せられた顔が、私の心臓の大きな音に気づいてしまうんじゃないかとさらにどきどきして…。

男の人になれてない私の体は固まったまま。

不意に目に入る昴の唇が、お店の前で交わしたキスを思い出させるし…。

俯いて、どうしようばかりが頭の中をぐるぐるしていた…。

隣の昴は、ただくすくす笑っていて、私のそんな気持ちをからかっているようで…。

そんな時。

鞄の中の携帯が鳴った。

「っごめん」

見ると、姉さんから…。
滅多にかけてこない姉さんがどうして?

ちょっと嫌な予感を感じつつ出ると、いつもより低い声が聞こえてきた。
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