プラチナの誘惑
「好きな男はいないの?」

「あ…あの…」

一瞬よぎるのは、整った顔と才能溢れる仕事ぶり、そして温かな唇。

何度か交わしたキスがよみがえって、自然と声が詰まってしまう…。

昴の顔が浮かんで切なさがじわじわと溢れてきた。

「…いるのね?好きな男」

間髪入れずに聞いてくる私を追い詰めるような声が聞こえてきて泣きそうになる。

ただでさえ昴の本意がわからないままに振り回されている今の状況に、気持ちは不安定になっているのに…。

「よくわからない…。
誰も今までちゃんと好きになんてなった事ないから…」

なんとか言葉をつないでそう言った私の心は痛くて痛くて。

まともに恋愛をしてこなかった事が私のコンプレックスだと…今更ながらに実感する。

「…彩香…。
突然そんな事を悩み出すなんて…それに今まで断り続けてたお見合いする気になるなんて、何があったの?」

…さすが。

弁護士の勘はあなどれない…。





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